図書館は異界への入り口だと思う。
本を通じて別世界へ誘ってくれる。
「ここではないどこか」なんて、あるいは現実逃避でしかないのかもしれないけれど、狭く閉じてしまった自分の心や視点を広げたり、解放するきっかけ探しの旅にいとも簡単に連れ出してくれるのが本であるように思う。
とくに読書家というわけでは全然ないのだけれど、
昔から落ち込んだり、気分転換がしたい時は本を手にした。
今でも仕事で落ち込むことがあったり疲れた帰り道はふらりと本屋さんに吸い込まれるように入っていき絵本売り場をウロウロしたりしている。
思い返せば、学生時代はよく意味も無く図書室へ行き、昼寝したり写真集を眺めたりしていた。
意味も無く訪れてなんだか心地よい。図書館はとても好きな場所だった。
香川県直島にあるベネッセミュージアムからの眺め。美術館も図書館と同じ理由ですごく好きな場です。
昨夜、蜷川幸雄演出の舞台「海辺のカフカ」を見てきました。
ガラスのショーケースのような場面ごとのコンテナが、黒子の手で押され舞台上を滑らかに移動しながらストーリーが展開する。
シンプルなデザインの現実的なセットが、その動きで夢の中にいるような幻想的な雰囲気になる不思議な舞台。非常に印象的でした。
「海辺のカフカ」村上春樹原作
あらすじ
主人公の「僕」は、自分の分身ともいえるカラスに導かれて「世界で最もタフな15歳になる」ことを決意し、15歳の誕生日に父親と共に過ごした家を出る。そして四国(香川県)で身を寄せた甲村図書館で、司書を務める大島や、幼い頃に自分を置いて家を出た母と思われる女性(佐伯)に巡り会い、父親にかけられた〝呪い〟 に向き合うことになる。
一方、東京に住む、猫と会話のできる不思議な老人ナカタさんは、近所の迷い猫の捜索を引き受けたことがきっかけで、星野が運転する 長距離トラックに乗って四国に向かうことになる。
それぞれの物語は、いつしか次第にシンクロし…。
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少年カフカと老人ナカタさんを中心に展開するストーリー。
村上春樹独特の異界に行って帰ってくるような感覚と、それを通しての少年の成長というヒーローズジャーニー形式の小説。(と私は思っている。)
春樹作品の中で最も好きな小説の1つです。
そしてこの小説には、私のターニングポイントの思い出があります。
村上春樹の「海辺のカフカ」を初めて読んだのは、入社2年目の悩める会社員時代。
3年は会社にいなければ・・という呪縛(一般論)と、もっと勉強したいことを見つけてしまって早く若いうちに飛び出してもっと揉まれたい勉強したいという思いが自分の中でせめぎあって勇気の一歩を踏み出せずにモヤモヤしている時期。
小説に登場する悩める主人公、15歳の少年カフカの姿が自分と重なった。
作中で主人公が1人で聴いているradiohead。
私も鬱々としてくると聴きたくなる音だったので、聴きながら小説に没頭した。
そんな青臭い24歳の夏。
ストーリーよりもモチーフやディティールが気に入るかどうか?がどうやら重要らしい私。
そんなことに最近気付いたのですが、思い返すとこの小説はまさに。
私の大好きな物、図書館、radiohead、瀬戸内海(香川県)、動物との会話・・・。
共感のバイアスが高まってしまっていたのかなと思うと、思い返して少し恥ずかしい。
なにせこの時、小説を読んだ後、衝動的に香川県に行くことにしてしまったのだから。
世界で最もタフな25歳になるべく、誕生日をはさむ連休で仕事後に電車に飛び乗り嵐のなか香川県に行ってきたのでした。
そして、「何がどうなったからこう決めた」というような説明ができないのだけれど、香川に行ったことでなんだか決心がついてその後転職活動を始めたのです。(結果として充実した環境での仕事を手に入れることが出来たので心から良かったと思っています。)
瀬戸内海には多くの安藤忠雄建築があります。
安藤忠雄建築は、「潔い厳しさがあるけれど、人を心地よく包み込む」というのが私なりの解釈。
彼の作品をたくさん観たことが心の変化に大きく影響したと感じます。
やっぱり具体的にどうとは言葉にできないのだけれど。
この言葉でなにがどうなって云々と言えないけれど心が決まる感じ、村上春樹の小説のよう。
最近も、これからどうしていこうか迷っていたことがあり、つい先日1つ「こうしてみよう」という方向性をきめたところでした。
ちょうどまた変化の時期に、この作品に触れられたことになんだか縁を感じます。
島へ渡るフェリーの上からの眺め
ここからは余談ですが、この私の旅、ヒーローズジャーニーになぞらえると「試練」もありました。
小説のカフカ少年はカラスという男(チェコ語でカフカはカラス。作中のカラスは自分の分身のような存在)に導かれて香川へ行きますが、私には白いネコ(今の夫)がついてきました。
1人旅のつもりで「香川に行く」と伝えたら「俺も里帰りしたい~♬」と、結婚前のへらい(夫)も同行することになったのです。(へらいの実家は香川県)
そしていきなり、へらいのお母さんと対面することに・・・。(彼ママってやつですね)
お会いするのはすごく嬉しい楽しいことだったのですが、準備の悪いへらいは
、私が一緒にいることを伝えておらず直前でお母さんは私の存在を知ったそうです。(言ってないなんて私も知らなかった!)
息子がいきなり女の子連れて帰って来たらお母さんさぞびっくりだったでしょうに。。
お互いドキドキしながら台風の吹き荒れる中、車で丸亀市内を廻ったのはいい思い出です。
申し訳なさすぎてもう合わす顔がないと思っていたのですが、その後家族になるなんて人生不思議なものです。(へらいのご両親のおおらかな優しさに甘えさせていただいている私の結婚生活。)
「海辺のカフカ」もう1人の主人公ナカタさんはネコさんと会話ができる。小説内ではネコも重要な存在です。こじつけ感ありますが、なんとなく繋がりが見えたので書いておきます。
旅を通して私は、カフカからナカタさんになったのかもしれません。
にゃるにゃる。
ベネッセミュージアムに展示されている「天秘」(安田侃・作)
上に寝そべって空を眺めることのできる作品。
滑らかに磨かれたツヤのある石の上は、心地よいひんやり感となぜか柔らかさを感じました。
空を見上げながらずっと横たわっていたいような。。
小説の中で重要な役割を果たす「入り口の石」を彷彿させて1人で興奮したことは秘密です。
天秘に寝そべって眺めた空。
台風が過ぎた直後なので雲の流れが早く、表情がころころと変わります。観ていて飽きません。
しばらく帰っていないので、香川に行きたいなぁと思う今日この頃です。
あるいは、行っちゃうか!!
この日記を書いたのは「あるいは」って言ってみたかっただけかもしれない。。
(「あるいは」は春樹作品の主人公がよくつかう言葉)

コンテンツディレクション、文筆。工芸、古典芸能など暮らしや日本文化に関することを中心に、講座やイベントの企画・ディレクション、取材・執筆をしています。和樂web(小学館)、サントリー、中川政七商店、NewsPicks NewSchoolなどでお仕事中。夜の散歩、のんびり美術鑑賞、お茶の時間、動物が好き。