新作文楽「不破留寿之太夫(ふぁるすのたいふ)」観に行ってきました


今宵は、新作文楽「不破留寿之太夫(ふぁるすのたいふ)」を観に行ってきました♬

farusunotaifu
ふぁるすのたいふ=フォルスタッフ・・・だ…駄洒落ではありませぬ。
シェイクスピアの「ヘンリー4世」「ウィンザーの陽気な女房たち」を元に、両作品に登場する太鼓腹で好色のお調子者のフォルスタッフが主人公となった新作文楽。


※人間国宝の鶴澤清治さん監修・作曲、
河合祥一郎さん脚本、石井みつるさん装置・美術のれっきとした(?)文楽です!

「ヘンリー4世」をTVで観てフォルスタッフに感銘を受けたという清治さんの「文楽作品の99%は人が死ぬ悲劇ですが、そうじゃない、笑いのある楽しい作品を作りたいと思った」という思いから出来上がった作品。

喜劇(劇中何度も声を上げて笑いました)でありながら反戦や社会風刺も織り交ぜられていて、笑いながら愉しんだ後、正義とは?名誉とは?と、思いを馳せる作品でした。

舞台最後のフォルスタッフの長いセリフに出てくる
「名誉にこだわって戦なんぞして、手足を失ったらどうする。名誉がなくなった手足を元通りにしてくれるか。(中略)やがて時が来れば、戦など愚かしいとわかる時代もやって来やう。空しい名誉のためにあくせく生きるなどまっぴら御免ぢゃ。」
という言葉が印象的です。

 

※写真は特設サイトからお借りしました。

桜の根元で居眠りする不破留寿之太夫(=フォルスタッフ)と、いたずらを仕掛ける春若(=ハル王子)。
コミカルなシーンですが、舞台セットと色彩豊かな装束、美しく操られる人形の姿にうっとりとさせられます。

 

 


奥行きのある影絵のような美しい舞台セットも、お揃いのモダンな裃も素敵でした。

 


軽やかな掛け合いの中の言葉遊び(ダジャレ?!)、義太夫節に織り交ぜられるイングランド民謡(邦楽的に演奏されたり・・)、和洋・古典芸能と現代の感性がミックスされた、遊び心ともいうべき面白みがたくさん。

こちらは居酒屋でのシーン。
主役たちのやり取りの後ろで、背景として酒を飲み交わすセリフのない人形たちの動きもユーモラスで(カニかま振ってる?!テニスしてる?!)みなさん愉しみながら演じていらっしゃるようで観たい所だらけ。目をたくさん動かしました!

札で吊るされたおしながきも、「おでん」「えだまめ」といったTHE 居酒屋メニューのほか、「ふぃっしゅあんどちっぷす」「ろーすとびーふ」など英国のメニューが書かれていたり遊び心満載!


文楽初心者の私にも、愉しみながら味わえる作品でした。
22日までなので、もうすぐ終わってしまいますがぜひまたやって欲しいなぁ。
オススメです!

新作文楽「不破留寿之太夫」
http://www.ntj.jac.go.jp/kokuritsu/h26/falstaff.html
9月6日~9月22日
国立劇場 小劇場にて

どんな話なのか・・・は、哲学者 植村恒一郎教授がご自身のブログに書かれていた解説がわかりやすかったです。
(以下、引用です)

ヴェルディの『ファルスタッフ』は『ウィンザーの陽気な女房たち』に忠実なので、エッチなダメおやじとして
のファルスタッフが前景に押し出された。しかし本作『ふぁるすのたいふ』は、基本は『ヘンリー四世』で、その中に『ウィンザーの陽気な女房たち』の中から、ファルスタッフが二人の女性に同時に同文ラブレターを出して二人をものにしようとしたが、バレて酷い目にあったシーンを加えた合成になっている。『ヘンリー四世』では、ファルスタッフはいくらダメダメおやじとはいっても、武人であり騎士であって、ハル王子との友情が物語の基本線になっている。ハル王子は、遊蕩に明け暮れる放蕩息子で、父王ヘンリー四世を嘆かせるのだが、同様な遊び人であるファルスタッフとはウマが合う。だが、ヘンリー四世の死とともにヘンリー五世に即位したハル王子は、倫理観溢れる厳格な王に変身したために、遊び人ファルスタッフは捨てられるというのが物語。

本作『ふぁるすのたいふ』では、ハル王子は「春若」という若殿様になっており、ふぁるすのたいふも武士だから、日本の武士の主従関係に原作はうまく翻案されている。『ウィンザーの陽気な女房たち』の二人の女性は、居酒屋の二人のおかみさんに翻案され、これも話がうまくかみ合っている。このように見ると、一方に武士(騎士)道徳があり、他方に快楽と女性を愛することを最高の価値とするふぁるすのたいふがあり、両者の価値観が真正面からぶつかるという奥行きの深い設定になっている。その上で、色仕掛けのドタバタ喜劇が笑劇として前景化され、我々を抱腹絶倒させるということは、最終的に、ふぁるすのたいふ=ファルスタッフの価値観に軍配が上がるということだろう。ふぁるすのたいふの世界観を一言で言えば、「戦争で死ぬなんて馬鹿の極み、戦うくらいなら逃げるさ、俺は女と快楽だけを愛する、たとえそれを罰せられても、絶対に反省なんかしない」というものだからだ。

※ヴェルディの『ファルスタッフ』はオペラのこと。

小俣荘子(omata shoko)
クラシノキカク 代表 / ディレクター・コラムニスト・施術家 衣食住にまつわるコンテンツの企画・ディレクション。頭蓋矯正と深層リンパドレナージュを中心とした身体を美しく健康的に整える施術。 「心地よい暮らし」を切り口に、心と身体の双方から健やかに日々を愉しむ提案をしています。

2014-09-20 | Posted in 古典芸能, blog, 日本のことNo Comments » 

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