国立近代美術館で開催中の熊谷守一展へ行ってきました。
守一さんのこと、あまりよく知らなくて、明るい色合いや愛らしい生き物の絵のイメージしかなかったのだけれど、若い頃はトーンの暗い絵が多い人だった。
闇と光の美しさを研究していたのだって。
初期の代表作のひとつ「礫死」。
踏切で自殺した女性の姿を描いた作品なのだけれど、礫死体をむごたらしいものとは見ずに、美しいものとしてスケッチして出来上がった作品だった。
月明かりに照らされておぼろげに白く光る身体。
守一は、この絵を回転させたら女性が立ち上がって生きているようだったと言っていて、のちに自身の娘が病気で亡くなる前、床に伏している様子を描いた絵も回転させていた。なんだか祈りのようだった。
後期の作品では「暗くしなくても色の組み合わせで暗さと明るさの差を表せると発見した」っていうコメントも興味深かった。
特徴的な赤の輪郭線は逆光で被写体を見たときに見える光を表しているそう。
若い頃と仙人と呼ばれるようになってから、ずっと繋がっている。守一が見ていたのは、光と闇の美しい世界だったんだな。
コンテンツディレクション、文筆。工芸、古典芸能など暮らしや日本文化に関することを中心に、講座やイベントの企画・ディレクション、取材・執筆をしています。和樂web(小学館)、サントリー、中川政七商店、NewsPicks NewSchoolなどでお仕事中。夜の散歩、のんびり美術鑑賞、お茶の時間、動物が好き。